2010年3月8日月曜日

由佳の本棚3月です

 
由佳の本棚は、今月も4冊ご紹介しました。
個人的には、「ヘヴン」で胸が痛くなり、「ぶれない」で気持ちを立て直し、「廃墟に乞う」で若干つっこみ、「ほかならぬ人へ」で愛について考えました。

「キノベス!1位」川上未映子 著/ヘヴン。
主人公は14歳の僕。同じクラスの生徒から集中的ないじめをうけます。
いじめているのは、学年の中心人物。
運動も勉強もトップクラスで、先生からも一目置かれている生徒です。
その生徒の考えるいじめが並みじゃない。
いじめによって、心も体も打ちのめされ続ける主人公。
死ぬことを考えながらも、必死で立ち直っていきます。
主人公は何を支えに、どうやって立ち直っていくのか、人間の悪意はどこまでひどいことが出来るのか、主人公は何故いじめられなければいけないのか。
ページをめくるのがつらかったし、途中で何度も読むのをやめようと思いました。
でも、実際に同じ思いをしながら学校に通っている人がいるんですよね。
そして、いじめる側もいる。それがどんなことか、本を読んで感じてほしいです。
 

きょねん亡くなった、日本画家・平山郁夫さんのエッセイ。
私が最初に買った画集は、平山郁夫さんのものでした。
はじめて平山さんの個展に行った時の作品が、今でも目に焼き付いています。
エッセイでは、平山さんがどんな子ども時代を送って、大学でどんなことを学び、つらい下積み生活を終え、画家として大成するまでを、平山さん自らが振り返っています。
番組の中ではご紹介できなかったんですが、平山郁夫さんの奥様も東京芸大の学生で、平山さんと同級生。
しかも、奥様が首席、平山さんが次席で卒業されたそうです。
主席だから、奥様もものすごい才能の持ち主だと思うんですよ。
でも、結婚と同時に、一つの家族に画家は2人もいらないと絵をやめるんです。
奥様の支えもあって、あれだけの作品が残せたんですね。力になる一冊です。
 
直木賞受賞作品。主人公は、北海道警察本部 捜査一課の仙道孝司。
ある事件をきっかけに精神に深い傷を負い、休職中の刑事です。
北海道警察本部人事第二課から自宅療養を命じられ、4週間に一度、指定医の診察を受けることが義務付けられています。
その指定医から、仕事のことは一切考えず、温泉でも言ってゆっくり過ごすよう医者にいわれて行くものの、昔の知り合いや同僚から捜査を頼まれ、事件解決に奔走する6編がおさめられています。
最初の作品では休んでいるのが11カ月だったのが、途中で時が過ぎ、一年半以上休んでいることになっていました。
だから、みんなが仙道刑事に捜査を頼むからだって!
「みんな、仙道さんをまきこまないで!」とハラハラさせられる1冊です。
そうそう、一話完結だけど、答えを読者に任せる話があります。気が抜けん!
 
直木賞受賞作品2つめ。
初めてこの本を見た時、「ほかならぬ人」って、何なんだろう?
本を読み終わって、私にとっての「ほかならぬ人」って誰なんだろう?と、思っています。
主人公は、宇津木明生(うつぎ・あきお)27歳。スポーツ用品メーカーに勤める営業マンです。
俺はきっと生まれそこなったんだ」とずっと思っていました。
明生は、仕事の接待で行ったキャバクラで働いていた女性に恋をし、両親の反対を押し切って結婚します。そして、結婚生活2年目で、浮気をされます。
妻の事故でヨリを戻すことになるのですが、心はすれ違ったまま。
明生の中国研修を機に離婚します。その中国研修から帰った明生の耳に届いたのは、衝撃的な出来事でした。
本の中で明生は幼馴染の女性に、「ベストの相手は必ずいる。ベストな相手が見つかった時は、この人に違いないっていう明らかな証拠があるんだ」と言います。
明生はその証拠がみつかりました。
今、ベストな相手がいるあなた、証拠はありますか?
 
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